評     価  

 
       
File No. 0955  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2009年04月04日  
       
製  作  国   アメリカ / ド イ ツ / イギリス  
       
監      督   トム・ティクヴァ  
       
上 映 時 間   117分  
       
公開時コピー   真実さえ、取引されるのか。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   クライヴ・オーウェン [as ルイ・サリンジャー]
ナオミ・ワッツ [as エレノア・ホイットマン]
アーミン・ミューラー=スタール
ブライアン・F・オバーン
 
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あ ら す じ    世界第5位の莫大な資金量を誇る、ルクセンブルグに本部を置く巨大銀行IBBC。しかし、そのメガバンクの取引には違法行為の疑いがあった。インターポールのルイ・サリンジャー捜査官はニューヨーク検事局のエレノア・ホイットマンと共同で捜査に当たるが、ドイツで重要な証人と接した検事局員が彼の目の前で不慮の死を遂げてしまう。死因は心臓麻痺と診断されるが、サリンジャーは死因に疑いを抱き死体を改めたところ、首に小さな注射針を刺されたような痕跡を発見し他殺の疑いを強める。
 サリンジャーとエレノアが次の証人に選んだのは、次期首相とも噂されるイタリアの軍事企業の社長だった。しかし、彼も街頭演説の最中にまたしても2人の目の前でまんまと射殺されてしまう。だが、犯人はうかつにも射殺現場に足跡を残しており、義足用の特殊な痕跡から容疑者としてひとりの男を割り出した。そして、義足の経路をたどって2人はニューヨークに飛び、ついに男の住所を突き止める。ところが、住所をたどって訪れた場所は空き地で、またしても捜査の糸は途切れたかに思えた。
 術なく空き地を見張るサリンジャーたちの前に、偶然にも男が現れる。サリンジャーたちは男を尾行し、美術館で男がIBBCの要人と接触するのを見届けてから、ついに男を追い詰める。しかし、ここにもまたIBBCの刺客が送り込まれており、激しい銃撃戦の末に男は射殺されてしまう。執拗なIBBCの証拠隠滅行為に対し、サリンジャーはもはや法の枠の中では太刀打ちできないことを悟る。彼は家族のあるエラに事件から手を引かせ、自ら法の枠を超えてメガバンクに向かう決意をするのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    この作品で描かれているメガバンクIBBCは、実在する銀行がモチーフになっていると思われる。やはりルクセンブルグに籍を置くパキスタン系のイスラム銀行BCCI(Bank of Credit and Commerce International)がそれで、実際にイスラム諸国の大量破壊兵器開発の資金源となり、アフガニスタンではCIAに資金仲介を行ったとも言われている。おそらくはこの作品で描かれているような証拠の揉み消しや証人の殺害も、あながちフィクションばかりとは言い切れないような気がする。
 さて、そんな巨悪に単身で立ち向かう、クライヴ・オーウェン扮するインターポールの捜査官サリンジャー、そんな日本人好みのストーリーだったが、銀行の金の流れがほとんど描かれていないのは致命的な弱点だ。これではIBBCが銀行ではなく単なるマフィアのような犯罪組織と何ら変わるところがなく、邦題にもなった“ザ・バンク”が意味を持たなくなってしまう。また、サリンジャーと手を組むニューヨーク検事局員に美形のナオミ・ワッツを持ってきた配慮は嬉しいのだが、ストーリーの進行上彼女がほとんど大きな役割を果たしていないため、存在感が薄くなってしまっているのも残念。
 おそらく、あのラストシーンには異論が多々あるだろうと思われるが、巨大組織に単身で立ち向かう男がたどり着ける結果としては、あれが限界だろうと思われる。それにしても、きな臭い噂の多い銀行の頭取が、護衛も付けずに単身で出歩くなど、現実にはあり得ないのではないだろうか。そこに、作品のラストを飾ろうと制作側が苦しみ果てた痕跡が表れているように、私には感じられた。