評 価
File No.
1117
製作年 / 公開日
2009年 / 2009年12月05日
製 作 国
アメリカ
監 督
ピート・ドクター
上 映 時 間
103分
公開時コピー
愛する妻が死にました
だから私は旅に出ます。
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最初に観たメディア
Theater
Television
Video
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キ ャ ス ト
(声の出演)
エドワード・アズナー
[as カール・フレドリクセン]
ジョーダン・ナガイ
[as ラッセル]
ボブ・ピーターソン
[as ダグ]
クリストファー・プラマー
[as チャールズ・マンツ]
デルロイ・リンドー
ジェローム・ランフト
エリー・ドクター
ジェレミー・レアリー
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あ ら す じ
少年の頃から冒険が好きで、テレビで人気の冒険家
チャールズ・マンツ
に憧れていた
カール・フレドリクセン
は、同じ冒険好きの少女エリーと出会う。2人はやがて結婚し、いつかきっと伝説の場所“パラダイス・フォール”にいくことを約束した。そして年月が過ぎ、2人は子供には恵まれなかったものの、変わらない深い愛情に結ばれて歳を重ねていった。
ある日愛する妻エリーに先立たれてしまい、カールにはエリーとの思い出が詰まった家が人生のすべてとなってしまう。開発の波が押し寄せても頑なに家だけを守り通そうとするカールだったが、ある事件をきっかけに家を立ち退いて、それまで断固として拒み続けていた老人養護施設へ入らざるを得なくなってしまう。そこで一大決心をしたカールは立ち退き当日の朝、無数の風船を使って家ごと空へと舞い上がるのだった。エリーと約束した伝説の場所“パラダイス・フォール”を目指して。
ところがそこへ、思いがけない一人の闖入者が。“老人お手伝い”のバッジが欲しくて自らカールの手伝いを申し出ていた少年
ラッセル
で、ポーチの下にいたまま逃げ遅れて空まで来てしまったのだ。カールは渋々ながらもラッセルを家に招き入れ、一緒に“パラダイス・フォール”を目指すこととなるのだった・・・・・。
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たぴおか的コメント
オフィシャルサイトのトップに、宮崎駿監督の「実はボク、追憶のシーンだけで満足してしまいました」というコメントが掲載されているが、全く同感。カール(当時は少年あ)とその妻となるエリーが出会うシーンから始まり、そこからエリーが亡くなるまでは台詞が一切ないのだが、それだけで立派な短編映画になるのではないだろうか。カールじいさんがどれほど妻のエリーを愛していたか、だからこそ彼女が亡くなってからは彼女と過ごした家に対してどれほどの思い入れがあったのか、それらがひしひしと伝わってくるのだ。そのおかげで、空飛ぶ家が樹木や洞窟の岩にぶつかって壊れそうになる時には、カールじいさん本人よりもそれを観ている自分のほうがハラハラしてしまった。
ズバリこの作品のテーマは「愛」で、それは妻への愛であり、赤の他人であった少年カールへの愛、さらにはダグやケヴィンといった動物への普遍的な愛情までが嫌みなく上手く作品に取り込まれているあ。勘違いしがちだが、カールじいさんはよく物語に登場するような偏屈な頑固ジジイなどではなく、妻エリーへの愛情が深かったからこそエリーを失ってできた心の空洞が大き過ぎて、それを埋める術が見つからずに呆然自失の状態に陥っていただけなのだ。
ディズニー×ピクサーのアニメはこの作品がちょうど10作目になるが、『ファインディング・ニモ』や『ウォーリー』など今までは主人公がいずれも人間以外で、今回の『カールじいさんの空飛ぶ家』が初めて人間を主人公にした作品となった。正直観る前までは、『ニモ』や『ウォーリー』と比べるとインパクトに欠けるように感じていこの作品だったが、実際に観てみたら個人的には間違いなくディズニー×ピクサーアニメの最高傑作にランクする作品だった。愛する妻との思い出が詰まった家は確かにカールじいさんにとってはかけがえのない宝物だっただろう。しかし、彼はラッセルやケヴィン、ダグらと触れ合ううちに忘れかけていた大切な事を思い出すのだ。家は自体は実は単なる“物”に過ぎず、本当の妻との思い出はすべて自分の記憶に刻み込まれている。そして、彼にとっては過去の思い出に囚われてばかりいるのではなく、新たな未来を築き上げることの方が遙かに大切なのだ。だからこそ家を捨ててまでもラッセルやケヴィンを助けたのであって、そのことによって生まれたラッセルと過ごす時間、それこそがエリーが冒険日記に書き残した「新しい冒険」に他ならないのだと思う。