評 価
File No.
1571
製作年 / 公開日
2011年 / 2012年03月24日
製 作 国
イギリス / アメリカ
監 督
サイモン・カーティス
上 映 時 間
100分
公開時コピー
メイクを落として、
ヒールを脱いで、
それから
秘密の恋におちた。
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最初に観たメディア
Theater
Television
Video
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キ ャ ス ト
ミシェル・ウィリアムズ
[as マリリン・モンロー]
ケネス・ブラナー
[as ローレンス・オリヴィエ]
エディ・レッドメイン
[as コリン・クラーク]
ジュリア・オーモンド
[as ヴィヴィアン・リー]
ダグレイ・スコット
[as アーサー・ミラー]
ジュディ・デンチ
[as シビル・ソーンダイク]
ドミニク・クーパー
[as ミルトン・グリーン]
エマ・ワトソン
[as ルーシー]
ゾーイ・ワナメイカー
[as ポーラ・ストラスバーグ]
トビー・ジョーンズ
[as アーサー・ジェイコブス]
デレク・ジャコビ
[as オーウェン・モアスヘッド]
ピップ・トレンス
[as ケネス・クラーク]
ミランダ・レイズン
[as ヴァネッサ]
ジム・カーター
[as バリー]
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あ ら す じ
1956年。世界のセックス・シンボルと謳われたハリウッドスター、
マリリン・モンロー
がロンドンを訪れた。
ローレンス・オリヴィエ
が監督と主演を務める新作『王子と踊り子』の撮影のためだった。マリリンの隣に寄り添うのは、結婚したばかりの夫である劇作家・
アーサー・ミラー
だった。オリヴィエと
ヴィヴィアン・リー
夫妻から歓迎されたマリリンだったが、しかし彼女の撮影にかける期待は現場で呆気なく打ち砕かれてしまう。
マリリンの演技方法を否定するオリヴィエは、彼女の演技コーチ
ポーラ・ストラスバーグ
までをも敵対視する。さらに、結婚を後悔していると書かれた夫のメモにショックを受けたマリリンは、プレッシャーから仕事に集中できず、撮影に遅刻するようになる。そんなマリリンにオリヴィエは苛立ちを募らせる一方で、夫のアーサーはマリリンに創作活動を乱されることを理由に、精神状態が不安定なマリリンを置いて一人帰国してしまう。
初めて念願の映画製作に携わることとなった、第三助監督の
コリン・クラーク
は、撮影が大幅に遅れて切羽詰まったオリヴィエから、マリリンの見張り役を命じられる。マリリンに対して素直な態度で接するコリンの態度は彼女の心を和ませ、やがて孤立無援と化した彼女の心の拠り所となっていく。コリンもまた、自分に他で弱味を見せるマリリンに対して、思いやりと恋心の混じった複雑な心境を抱くようになっていくのだが・・・・・。
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たぴおか的コメント
ミシェル・ウィリアムズがあのマリリン・モンローを演じ、『マーガレット・サッチャー』のメリル・ストリープと共に、アカデミー主演女優賞にノミネートされた作品。今まではメリル・ストリープの受賞は当然だなんて思っていたが、この作品を観てしまって考えは180度変わってしまった。そもそも、映画として単純にどちらが好きかと聞かれれば、明らかに『マリリン』の方だし、そのうえミシェル・ウィリアムズがハンパじゃなく可愛い。
前年の『ブルー・バレンタイン』に続いて2年連続主演女優賞にノミネートされたミシェル・ウィリアムズは、演技派女優としての地位を確固たるものにしたと言っていいだろう。その彼女のプロフィールを調べて驚いたのは、『スピーシーズ 種の起源』でナターシャ・ヘンストリッジが演じるエイリアンの少女時代役が彼女の映画デビューだったらしい。意外なところで彼女のデビュー作を観ていたわけだ。
私は、もしもマリリン・モンローの映画が作られたら、彼女を演じるのはスカーレット・ヨハンソンしかいないと常々思っていたが、ミシェル・ウィリアムズを起用するとは意外な盲点を突かれた思いだ。確かに、典型的な美人といえる実際のモンローよりも、ミシェルのモンローは可愛らしさが強調されて柔らかな雰囲気を醸し出しているのだが、既にモンローが亡くなった後に生まれた世代の私にとっては、さほど違和感は感じられない。むしろ、モンローの映画を観たことがない私にとっては、ミシェルの演じたモンローのイメージが本物のモンローとして刻み込まれそうな、そんな強いインパクトを与えてくれた。
良く言えば天真爛漫、悪く言えば周囲にはお構いなしで我が道を行く、それがマリリン・モンローに対する私のイメージなのだが、それが誤りであったことがこの作品を観て初めてわかった。彼女の生い立ちによるものだと思うが、実際のマリリンは常に誰がが支えていなければ折れてしまいそうなほど、繊細で傷つきやすい女性だった。だからこそ、演技にも真摯に取り組んでいて、ストラスバーグからメソッド演技法の指導を受けていたのも、単なるセックス・シンボルにとどまらず、真の女優へ脱却しようともがき苦しんでいたためだったのだ。
『王子と踊り子』の撮影が行われたのはちょうどその頃で、あろうことか主演であり監督を務めるローレンス・オリヴィエは、メソッド演技法に真っ向から異を唱えていたのだ。当然2人が衝突しないはずはなく、オリヴィエに演技を否定されたマリリンの苦悩が痛いほど伝わってくる。けれども、オリヴィエもまたマリリンの演技を否定しながらも、スクリーン上で光り輝く彼女の女優としての天性の資質に魅了され、同時に拭いようのない敗北感を感じていたのだろう。
演技は上手くいかずに体調を崩し、愛する夫は確執を抱えたまま帰国してしまい、マリリンは孤立無援状態に陥ってしまうわけだが、そんな彼女の前に絶妙のタイミングで現れたのが、原作の著者で作品の主役でもあるコリン・クラークだったのだ。おそらくマリリンのコリンに対する気持ちは演技などではなく、コリンに誤解させてしまうかもしれない危険性を承知しながらも、自分を支えてくれる誰かを必要としていたのだと思う。そして、対するコリンがマリリンに恋心を抱いてしまうのは当然の結果で、マリリンのような女性からあんな態度で接してこられれば、それを拒絶できる男性は存在しないと私は断言したい(笑)。