評     価  

 
       
File No. 1778  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2013年04月20日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ベン・ザイトリン  
       
上 映 時 間   93分  
       
公開時コピー   あたしは強くなる  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   クヮベンジャネ・ウォレス [as ハッシュパピー]
ドワイト・ヘンリー [as ウィンク]
 
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あ ら す じ    長々と伸びる堤防のそば、まるで世界から忘れ去られたような河川近くのコミュニティー、“バスタブ”。6歳の少女少女ハッシュパピーはそこで、酔ってはバカ騒ぎにうつつを抜かす荒くれ者の父親ウィンクと暮らしていた。“バスタブ”の仲間たちとの生活は活気にあふれ、まるでお祭り騒ぎのような毎日を送っていた。
 子供たちは地球の温暖化や生態系の変化によって、“バスタブ”に存続の危機が迫っていることを教えられていた。そしてある日、百年に一度という大嵐が訪れ、多くの人々は“バスタブ”を離れていく中、ハッシュパピーとウィンク、そして数名の仲間は“バスタブ”を離れようとしなかった。嵐が過ぎ去った後、“バスタブ”はすべてが水没してしまい、しかもウィンクは重い病を患っていた。
 ウィンクと仲間たちは、堤防を爆破し“バスタブ”の水を排出させようとする。しかし、爆破は成功して“バスタブ”から水が引いたものの、それまで動物や植物が暮らしていた豊かな大地は、既に死に絶えてしまっていた。それを見たハッシュパピーは、自然界の秩序が崩壊に向かい、有史以前の獰猛な野獣オーロックスが氷河の中から蘇ってくることを恐れていた。
 政府は“バスタブ”を強制退去区域に指定し、住民たちを難民収容所に強制連行する。そして、病院に収容されたウィンクは、ハッシュパピーに自分が死ぬことを告げ、「自分を家に連れ帰ってほしい」と仲間に懇願する。仲間と共に、ハッシュパピーとウィンクは住み慣れた“バスタブ”に戻るが、ウィンクはますます衰弱していく・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    6歳の少女ハッシュパピーを演じるクヮヴェンジャネ・ウォレスが、史上最年少でオスカー主演女優賞にノミネートされたことで俄然注目を浴びることとなった作品。そうでもなければ、無名の新人監督によるインディ作品に過ぎないこの作品、おそらく劇場で観ることはなかっただろう。ただ、前の週には『コズモポリス』でほぼ全席満員状態だったヒューマントラストシネマ有楽町が、この日は半分ほどが空席だったのを見るとは、作品の訴求力が不足しているのは明らかだ。
 かく言う私も最年少のオスカー候補クヮヴェンジャネ・ウォレスの演技だけが観たくて、作品自体には全く期待をしていなかった。観てみると、決して派手さはないものの、じんわり染みるなかなかの佳作。ハッシュパピーの強い生命力を感じさせる目には圧倒されるが、それにもまして印象が強かったのは、ドワイト・ヘンリーが演じる一見すると粗野そのものと思える父親ウィンクだ。彼を観ると、「こういう子供の導き方もあるんだなぁ」と、ちょっと感心させられる。彼が娘のハッシュパピーに教えたのは、ただひとつ「強く生きる」ことで、それがストレートにウィンクの言動に表れている。
 ただ、後半のストーリーは荒唐無稽とも言いたくなるほどあまりに飛躍し過ぎで、なぜあんな展開になるのか観ていて混乱させられるのも事実。ハッシュパピーを先頭に子供たちがたちが一斉に海を泳ぐ目的もわからなければ、彼らが船に拾い上げられてナイトクラブに訪れるという展開も奇異に感じる。そして極めつけは、太古の猛獣オーロックスの復活で、私には未だにあれが現実なのか、それともハッシュパピーの想像の中でのことなのか判断がつきかねる。