評     価  

 
       
File No. 2427  
       
製作年 / 公開日   2016年 / 2016年06月18日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   黒沢 清  
       
上 映 時 間   130分  
       
公開時コピー   あの人、
お父さんじゃありません。
全然知らない人です。
 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   西島 秀俊 [as 高倉幸一]
竹内 結子 [as 高倉康子]
川口 春奈 [as 本多早紀]
東出 昌大 [as 野上]
藤野 涼子 [as 西野澪]
戸田 昌宏 [as 大川]
馬場 徹 [as 松岡]
最所 美咲 [as 西野多恵子]
笹野 高史 [as 谷本]
香川 照之 [as 西野昭雄]
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    元刑事で現在は大学で教鞭を執る犯罪心理学者の高倉幸一は、かつて同僚だった刑事・野上から、6年前に発生した一家失踪事件の分析を依頼される。だが、事件唯一の生き残りである長女・本多早紀の記憶をたどり調査を進めても核心にはたどりつけずにいた。
 一方、高倉が妻・康子と共に最近引っ越した新居の隣人は、どこかつかみどころのない家族だった。病弱な妻・多恵子と中学生の娘・澪をもつ人の良さそうな主人・西野昭雄との何気ない会話に高倉夫妻は翻弄され、困惑する。
 そんなある日、澪は高倉に「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です」と告げる。その言葉に高倉が衝撃を受ける中、未解決の一家失踪事件と隣人一家の不可解な関係が繋がり、高倉夫妻の平穏な日常が崩れていく・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    この週末の公開作中、最も期待度は高かったのだが・・・・・残念ながら今ひとつだった。原作を読んでいないだけに、映画だけじゃわからないことが多すぎて、欲求不満に陥りそうな作品だ。唯一期待を裏切ることがなかったのは、香川照之の演技力くらいだろうか。
 その香川照之演じる西野も、冒頭からロコツに怪しすぎて、気味悪さを通り越してむしろ滑稽にさえ見える。個人的には、人当たりが良くて虫も殺さないような好人物を装っていて、実は裏の顔が・・・・・という設定の方が断然面白いと思うんだけどね。そんな西野の怪しさのおかげで、過去の一家失踪事件の裏にも彼が絡んでるんじゃないか、というのは誰もが勘ぐること間違いなし。そう思わせておいて「実は真犯人が別にいた」という意外性があればまだ面白いだろうが、その意味では実に“予定調和”な展開だった。
 予告編を観た時には「黒木華かな?」なんて思えた西野の娘・澪役が、『ソロモンの偽証』の藤野涼子だったとは、エンドクレジットを観るまでわからなかった。そして、キャスティング以上にわからなかったのが、普段は西野の言いなりに家族を装っていて、あまつさえ西野の犯罪に荷担すらしている澪が、なぜ西島秀俊演じる高倉に「あの人、お父さんじゃありません」なんて告げたのか。一体西野に対してどういうスタンスで臨んでいるのか、澪の真意が知りたいものだ。
 かつての一家失踪事件で残された女の子を川口春奈が演じているのは、陰惨になりがちなこの作品の唯一の清涼剤のような役割を果たしてるんじゃないかな。それだけにもっと物語の核心に迫るような絡み方をするのかと思ったが、単なる“6年前の事件の被害者”の域を出ていないのは残念。西島秀俊に香川を喰うほどの演技力があるわけはないし、竹内結子も活かされているとは言えず、東出昌大に及んでは早々とお役御免という有様だ。一言でまとめるならば「香川照之の怪演がすべて」で、香川照之の独壇場的な作品だった。