私にしては珍しく、公開1週目に見送ったものの、後になってだんだん気になってきて、公開から1ヶ月後にやっと劇場へ行く気になった作品。そして、公開時の初志を貫徹すべきだったと、思い切り後悔させられた。
そんなわけで、通常ならネタバレを避けて伏せ字にしたりするところだが、今さら私のこのサイトを見てから劇場でこの作品を観ようなんて人はまずいないだろうし、この作品にはそんな手間をかける気にさえならないため、敢えてネタバレのタブーを犯そうと思う。
まずは、作品のタイトルは“NOTHING COMES AT NIGHT”の間違いだ。夜になったら現れる“何か”から父・ポールは家族を守ろうとしている・・・・・なんて思わせておいて、その実夜になっても何も来ない。実はこれも数多い“感染もの”の亜種なのだが、他の作品と異なるのは、襲い来る感染者がスクリーン上に一切登場しないのだ。
感染だから、そもそも昼とか夜とかの区分が無意味で、感染するときは昼間であろうが夜間であろうがそんなことは関係ない。そして、夜になっても何も訪れないことがわかってしまうと、疑心暗鬼に囚われた人間の心理を描いたサスペンスってことになるのだが、そんなサスペンス作品として観ても緊迫感に欠ける。なぜなら、何者かがポールの家族を襲うことは決してないからで、何を隠そう最も危険な人物があろうことか主人公のポールなのだ。
だから、何者かが赤いドアを開け放ったのだが、それが誰であってももうどうでもいいし、何の目的があってそうしたのかもどうでもいい。また、飼い犬に誰が傷を負わせたのかも同じくどうでもよければ、その目的もクドいようだがどうでもいい。つまりは、あらゆる伏線と思われる設定がすべて無意味になっているのだ。そして、それらをすべて無意味にしてしまっているのは、“それ”なる何かがいかにも存在するかのように錯覚させるタイトル“IT COMES AT NIGHT”なのだ。